Live Commerce: 中国6.18商戦はライブコマースの急拡大が顕著

中国は新型コロナ禍で1月から3月、経済活動はほぼ停止の状態となり、中国の国内総生産は実質、前年比6.8%の大幅なマイナスを記録した。
その後4月から中国政府は活動再開を宣言し、工業生産高は4月には3.9%増、5月には4.4%増とボトム期を脱しているように見える。
そして6月、中国大手ECモールでは新型コロナ禍以降、初めて開催されたのが、6月1日〜18日間、「6.18キャンペーン」である。
「6.18キャンペーン」は中国の「W11」、「W12」と並ぶ、中国大手ECモールが開催する大きなセールイベントでもある。
今回は、この中国「6.18キャンペーン」の内容とこの新型コロナ禍で大きく成長したとされる「中国ライブコマース」の動向を見ていこう。

コロナ禍後でも成長する中国6.18キャンペーン

「6.18キャンペーン」は6月1日から18日にかけて行われる、中国のビックセールイベントである。このセールイベントは当初、中国の2大ECモールの一つ京東集団(JDドットコム)が会社の設立記念に始めたものである。
今では、中国の主要ECでる淘宝、天猫、蘇寧などの大手ECがこれに追従し、「W11」独身の日と同様、EC業界全体のセールに成長した。今年は低価格品に強みを持つ拼多多(PDD)なども加わった。
さらに、今年は新型コロナの影響で、このようなECセールキャンペーンが、この時期にどこまで中国消費者が反応するのか、中国EC市場の今後の動向はどうなるのかなど、海外EC事業者も大いに注目された。
結果としては、中国EC事業者が全力でセールに取り組んだことで、今年の「6.18キャンペーン」は例年にない盛り上がりとなったようだ。
まず、6.18が企業設立記念日の中国のEC売上シェア2位を誇る京東(JD.com)は、セール期間中(6/1~6/18)の売上額が2,692億元(約4兆649億円)を記録した。
これは前年比33.6%売り上げ増となり、これまでの記録を更新したようだ。さらに凄いのは、中国EC売上シェア1位の天猫(Tmall)で、売上額は6,982億元(約10兆5,428億円)を記録した。
天猫(Tmall)に出店している、中国大手メーカー「HUAWEI(ファーウェイ)」、「Xiaomi(シャオミ)」、「Haier(ハイアール)」などは、この期間中だけで、売上1億元(約15.1億円)を突破したとも伝えられている。
今回の中国「6.18キャンペーン」の大きな特徴としては、新型コロナ禍後で各中国企業が行った施策は、消費低迷の打開・景気回復のための「クーポンの発行」と中国KOL等によるライブコマースによる販売促進であった。

6.18キャンペーンの特徴はクーポン発行とライブコマース

今年の「6.18キャンペーン」では、これまで以上に、中国ECモール事業者ばかりではなく、モール出店事業者も販売促進に力を入れた。

2月、3月の新型コロナによる景気の低迷から、消費者をとり戻すには値引きキャンペーンを大々的に施策することである。つまり、「6.18キャンペーン」では「クーポン券の発行」を行った。
これは、単純に価格引き下げでは、在庫処分の印象が強くなるため、値引きではなくクーポン券の発行、配布という形で消費者に好印象となるよう消費を促した。
クーポン券は様々な種類のものが発行されたが、その中でもECモール内で共通に利用できるものが多く発行された。天猫ではセール期間中、140億元(2100億円)もの値引きクーポン券を発行するなど、各社が100億元(1500億円)規模のクーポン券を発行した。
また、金融機関と提携を強化し、分割払いの回数を多くしたり、さらには金利ゼロでの分割払いの導入など、消費者の購買欲を刺激した。

また、以前のブログ「新型コロナに負けない 中国のライブコマース的活路」でもお伝えしたように、中国では新型コロナの影響下にあっても、ライブコマースで、実店舗の減少した売上を、オンラインで補完するという内容の記事を書いたが、「6.18キャンペーン」でもこのライブコマースによる商品販売は盛り上がりを見せた。
既に、中国ではライブ配信による商品販売に有名人やKOLを起用するのは一般化していたが、6.18では商品メーカーの社員、社長までも出演し、販促を行い、KOLも実際にショップからライブ配信するなど新たな形式も現れた。
「天猫(Tmall)では、6.18キャンペーン」をを盛り上げるため、300人以上のタレントをライブ配信への招待した。さらに京東(JD.com)は30万回以上のライブ配信を行うと宣告した。
このように盛り上がりを見せている中国ライブコマース市場であるが、次にライブコマースがなぜこのように盛り上がりをみせているのか、また、中国ライブコマースの問題点など見ていこう。

盛り上がる中国のライブコマースの変化

中国のライブコマースは、タオバオがライブコマース展開の先駆者となり、2016年から始まったとされている。
その後、京東、蘇寧などのEC企業なども市場に参加するようになった。最近では、TikTok、Kwai(快手)などのショート動画プラットフォーム企業が新たに進出している。
2020年になり、新型コロナ禍では新たなライブコミュニケーションとしても注目されている。

「ライブコマース」とは、テレビネットショッピングのEコマース版である、中国KOLがインターネット・プラットフォームでライブで商品を紹介、試用し、さらに、視聴者からの質問にも対応する。
視聴者は商品を購入したい場合は、ライブ配信中に画面をクリックすれば良い。そして、中国ではインターネットをテレビで視聴できる、スマートTVが普及しているため、このライブコマースが急速に拡大したとも言われている。

また、中国のライブコマースサービスには2種類ある。
一つは、「Taobao(淘宝)」や「JD.com(京東)」などにEコマースプラットフォーマーによるもの。もう一つは、TikTok(抖音)」や「Kuaishou(快手)」といった動画配信プラットフォーマーによるものだ。
消費者協会のアンケートによると、後者の動画配信プラットフォームの方が、商品イメージがよりリアルで、ソーシャルな相互のやりとりができるなど、評価が高い。

中国ライブコマースの利点は、信頼できるKOL等のライブ配信は、商品が偽物でない本物のブランド商品であること。
そして、その場で商品の欲しい情報を手に入れることができること。
さらに、ライブコマースで紹介される商品は通常価格より低価格で設定されているため、「商品のコスパの良さ」などが挙げられている。

そして、2020年、新型コロナの影響で実店舗の売り上げが減少する中、実店舗ではライブ配信販売「ライブコマース」を実施し、その効果、価値が改めて注目され、普及が一気に進んだ。中国商務部によると、第1四半期では業界全体で約400万回のライブコマースを行ったとしている。
また、ライブ配信は、KOLばかりではなく、企業のトップも出演し、自社商品のPRを行っている。リサーチ会社のiiMedia Researchは2020年中国ライブコマース市場規模を9610億元になると予測している。

 

ライブコマースは急速に拡大、発展しているが、反面、トラブルも多いようだ。
ライブ配信で紹介された商品が購入したら、商品が違っていたや、ライブ配信者の誇大表現やアフターサービスが保障されていないなど不満の声も多くある。中国消費者協会が発表した調査結果では、37%の消費者がライブコマースを利用する際に商品トラブルに見舞われている。
中国政府では、管理を強化し、KOLによる商品販売の調査を実施、偽物販売や過度な宣伝行為などに対する厳格な処罰を与えるなど方針を明らかにしている。
今後は、中国ライブコマースが法的にも整備され、ライブコマースが健全なEコマース商取引の方向へ向かっていって欲しい。

まとめ

中国では新型コロナ禍で「ライブコマース」が急速に発展した。
ロックダウンが解除され、実店舗では営業を再開しているが、この「ライブコマース」は今後も主要なマーケティングチャネルとして定着するものと思われる。
なぜなら、「ライブコマース」は売上の拡大ツールとしてばかりでなく、顧客とのオンラインによるコミュニケーションツール、「デジタル接点作り」としても有効性が再認識され、さらに「オンライン接客」による実店舗への誘導としても活用できるからだ。

参考:

  • 中国「独身の日」に次ぐ大規模ECセール「618」の盛り上がり
  • 新型コロナウイルス以降に初めて開催された中国の一大ECセール「6月18日(6.18)」で見えた中国EC市場の今後の動向
  • 市場規模6.4兆円!中国はライブコマースの超先進国!!
  • KOL離れ?急速な成長による中国ライブコマースの変化

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タグ: マーケティング, ライブコマース, 中国, 中国越境EC

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